空色(全242話)

【一緒に見よう? 青空を】

十和の口から出た思いがけない言葉。
でも心に響くような真っ直ぐな声。

躊躇(タメラ)いも戸惑いも無く、
ただ思った事を口にしただけのような……

『そんな暇ないから』

でも応える事は出来ない。

自分のため。
母親のため。
親友のため。

大切な者を守るために、私は掟を破れない。

早苗のようにはなれないのだ。

『じゃあさ、暇になったら呼んで?』

『え?』

『アユの都合のいい時。 いつでもいいから』

十和はそう言うと、自分の携帯を私に差し出した。

私にアドレスを教えろと言ってるのだろうか。

そんなの教えるわけがない。
客にはプライベートまで関わってほしくないもの。

『要らない。 アドレス交換しない決まりだから』

携帯を開く事もなく、そのまま突き返す。
しかしまた携帯は押し返されてしまう。

私にも十和にも受け取ってもらえない携帯は、なんだか可哀相に思えた。
音をたてる事もなく、私達の間を行ったり来たり。

その行動に嫌気がさしてきた私は深く溜め息をついて携帯を開いた。

そんな様子を見て十和は声を押し殺して笑う。

『なによ』

『別に?』

生意気な笑顔。
苛々するわ。

『俺の携帯からアユに着信いれといて。 そしたら着歴消してくれていいから』

『どういう事?』

言っている意味が解らない。
私のアドレスを知りたいんじゃないの?

『俺からは連絡しない。 アユのプライベートまで干渉する気は無いよ』

そう言って今度は無邪気な笑顔を見せる。
可笑しな人間。

『非通知でもいいから暇な時に連絡して? それでさ……』

目的が解らないわ。

『雲一つない青空を、見に行こう?』

でもこの約束に、魅力を感じてしまった事。
それは、否定できなかった……
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