空色(全242話)
画面いっぱいの空。
青と白。
画面の右側には微かに太陽の光が見える。
どこかの美術館の有名な絵画より、
有名なカメラマンの写真より、
どんな物より綺麗だと、素直に思った。
『私のアドレス教えるから、その写メ送って』
『え……?』
『駄目なの?』
気分が悪い時や落ち込んだ時、
いつでも見えるようにしておきたい。
それに、同じ穴蔵にいる美香にも見せてあげたいと思った。
『送ったよ。 アドレス、消した方がいい?』
十和は私に宛てたメールを開き私に見せた。
『悪用しなきゃ消さなくていいよ』
『あ、悪用って』
事実、悪用される事は多々ある。
人から人へ、
漏れたアドレスが渡るのに、1日もかからない。
そして携帯は鳴りやまない。
そのほとんどが客からのメール。
ほとんどの客は店を通さず、女の子と直で交渉したいのだ。
こちらとしても雑費等が引かれる店での仕事より、直の方が儲けが良い。
そういうやり方で稼ぐ子もいる。
でも私は嫌だ。
そこまで落ちたくはない。
『わかった。 もしアユのアドレスが俺から漏れるような事があったら、俺を好きにしてくれていいよ』
十和はそう言ってアドレスを登録する。
『何それ。 タカシって』
「タカシ」という名前で……
『偽名。 これなら携帯見られたってアユってわからないだろ?』
得意げな顔しちゃって。
それなら携帯を見られない努力をしなさいよ。
『本名で入れてよ。 そんで常にプレッシャー感じててよ』
私、性格悪いかな。
十和を少し困らせたいみたい。
『うっわ… 案外、性格悪いなアユ』
『あはっ、自分でもそう思う!』
だって何だか楽しいんだもの。
十和の困った顔。
何だか可愛いんだもの。
『ってかアユって本名なわけ?』
『うん。 里崎愛結が、私の本名だよ?』
どれくらいぶりだろう。
自分のフルネームを口に出したの。
『アユは愛を結ぶって書くの』
美香も知らない私の名前……