空色(全242話)
人間なら誰だって、泣き顔は見られたくないじゃん?
だって不細工なんだもの。
目は赤いし、鼻の頭も赤いし。
次の日なんて、瞼(マブタ)が腫れて見れたものじゃない。
きっとそれは至上最高に不細工な朝。
『涙なんて見苦しい物を…… 失礼しました』
しかしどうだ?
十和の目は変わらず澄み渡り、青く見える程に白かった。
『んーん。 なんか嬉しかった』
まるで十和そのもの。
綺麗で、濁っていない。
『また来てね……?』
上着に袖を通す十和にそう言って笑顔を見せる。
すると、十和は着替えを止めて、目を丸くした。
『それ、営業?』
『え?』
『いや、やっぱいいや』
意味解んない。
一体、何が言いたいんだろう。
『んじゃ次の休み、空を見に行こうな』
十和はいつものように無邪気な笑顔を見せ、扉の向こうへ去っていった。
今日は、色々あった。
アドレスを教えてしまった。
本名を教えてしまった。
プライベートで会う約束まで……
『ヤバイかな』
こんな大それた事、今までにした事がない。
そのせいか、手が小刻みに震えていた。
これからどうなるのだろう。
十和と青い空を見て、
食事もする?
もし本当は悪い人で、襲われたりしたら?
『あー……』
恐怖と不安。
そして少しの期待。
ただ繰り返すだけの毎日に、少し変化が訪れるのだ。
どんなものなのか、想像も出来ない。