空色(全242話)
雲一つない空。
視界を遮る物は何も無く、ただ青一色が視界に広がる。
そんな空を見て、汚い心を洗いたかった。
それで自分が綺麗になるわけじゃないのは解ってる。
でも、一瞬でもいいから綺麗な人間になりたいと思った。
『明日休みなの。 そっちは?』
初めてダイヤルする携帯番号。
出た相手にそれだけ言って、様子を伺う。
《誰かと思うじゃん! こっち登録してないんだから》
予想通りの返答に、思わず口元が緩んでしまった。
確かにアドレスは教えたけど、番号は教えていなかったな。
きっと、恐る恐る電話に出たに違いない。
想像しただけで、少し可笑しい。
《んじゃー、見に行く?》
合言葉のようだね。
それだけで意味が解る。
『うん、行きたい……』
私は何も知らない。
青空も太陽も、
それが綺麗に見える場所も。
『連れてって。 十和のお勧めの場所に』
だから連れてってほしい。
光り輝く、青一色の世界へ……
その夜、夢を見た。
遠い日の夢。
視界に広がる一面の青。
上も下も青一色の世界。
あれは何処だったんだろう。
パパとママと幼い私。
私達家族は、何処に行ったのだろう。
あそこへ、もう一度行きたい。
もう一度、あの青さに包まれてみたい。
思い出せ。
思い出すんだ。
あの土地の名を。
……駄目だ。
遥か遠くの記憶。
今更、思い出せるわけがない。
でも、行きたい。