空色(全242話)

十和との待ち合わせは10時。
久しぶりに、7時に目が覚めた。

久しぶりにアイライナーを使う。

どうせいつもはシャワーや汗で落ちてしまうから、ファンデーションくらいしか使っていなかった。

そう言えば久しぶりにヒールのある靴を履くなぁ。
どうせ、いつも裸足になるのだから、適当なサンダルだった。

それにもう1つ。
街のネオンが、まだ点いていない。

なんだか全てが新鮮に思えた。


『おはよー』

待ち合わせの場所は駅のコインロッカー前。
十和は先に着いたらしく、壁にもたれて待っていた。

『ごめん、待たせた?』

『いんや、ちょうど来たとこ』

そう言った十和の手は赤く、かじかんでいるようにも見える。

悪い事をしたな。
待ち合わせ場所を、喫茶店にすればよかったかな。

コーヒーでも飲んでいてもらえば、こんな寒い思いしなくて済んだのに。

自分でコインロッカーを指定した事に申し訳なさを感じ、目を伏せる。

そんな私の頬に十和はそっと触れた。

ああ、
やっぱり手が冷たい。

『アユ、いつもと何か違う?』

そう言って、まじまじと顔を見る十和。

『メイクしてるからじゃない?』

明るい所で見られる事に慣れていない事もあって、なんだか恥ずかしいよ。


『あー、違う違う。 それもなんだけど何か違和感あると思ったんだよね』

『違和感?』

『そ、違和感』

十和はニコッと笑顔を見せると、私の頭をポンポンと撫でた。

『服。 裸のアユより俺はこっちのが好き』

何度も何度も聞いた「好き」という単語。

「綺麗だよ」「好きだよ」
言われる時は決まって、セックスの最中。

コートにジーンズ。
何処にでも売っていそうな、シンプルなパンプス。

こんな姿でいいの?
こんな私にも笑顔を向けてくれるの?

『前から思ってたんだ。 アユは、絶対に太陽の下の方が似合ってるって』

……それは嘘じゃないよね?
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