恋人は魔王様
むっと上目遣いで睨む私の髪の毛を撫で、笑いながらキョウが言う。
そして、優しく囁いた。

「結婚させてくださいって、挨拶に行こうと思って。
はっきりそう書くべきだった?」

……なんですって?

私は、再びフリーズした。

もしかしなくても、勘違いで私、3日間も泣き暮らしていたってこと?!
お気に入りのクッション一つ、駄目にして。
学校の授業まで、サボって。

キョウは固まっている私に向かって、今がチャンスとばかりに唇を押し当てる。
瞼とか、頬とか、耳とか、唇とか、喉とか、眉間とか、こめかみとか。

とにかく、そこらじゅう全部に。

ようやく我に返った私の唇にもう一度とびきり甘いキスを落とすと、キョウがにっこり笑った。
魅惑的な、心も溶かす甘い微笑だ。

「でも良かった♪
ユリアから熱烈な愛の告白が聞けたんだから、戦争問題がこじれて逢えなかったのも良しとしなきゃだな」

……いや、その突き抜けたポジティブシンキングはいかがなものかと思いますけど、ねぇ?

キョウは子供をあやすように私の髪を撫でた。
ポニーテールすら、勝手に解いている。

「それにしても、ユリア、俺に逢えなくて泣くほど淋しかったんだー☆
可愛いなぁ。今夜はいっぱい可愛がってあげるね」

「違いますっ」

「照れちゃって☆
そっか、夜まで待てないってこと?」

「いいえっ」

「じゃ、今すぐご両親に挨拶して、ユリアを魔界に連れ去ろうか?」

「駄目っ」

なんなの、私。
どうしてあっという間にコイツのペースに飲まれちゃってるわけ?

とはいえ、私の頬は軽く幸せで緩んでいるんだから怖ろしい。
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