恋人は魔王様
「良かった。
 立ち止まってくれて」

執事は甘いマスクでにこりと笑う。

「知らない人と喋っちゃ駄目って先生に言われたの」

小学生のようなことを言ってみる。

「それは良かった。ユリア様と私は知らない仲じゃないですよね☆」

通りすがりの人まで振り返るような、素敵な顔で彼は嬉しそうに笑う。


絶対天然だ、この人、もといこの悪魔!
「で、今日はお一人で何の御用?」

天然系の人物と接するには、自分を殺すほかない。
ママと長年付き合った結果身につけた生きる術をここでもフルに活用しながら、私は聞いた。

「やっぱり僕一人だと淋しいんだね。
 魔王様が喜ばれますっ」

それ、言葉の文ですから。
それに、喜ばせなくて一向に構いませんけど?

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