まだ見ぬ春も、君のとなりで笑っていたい
『僕は遥のおかげで少しずつ前を向けるようになってる気がする。遥は僕にとってすごく特別だよ』

そこまで書くと、天音はペンを置いた。

そしてこちらを向き、雪解け水のような透明な笑みを浮かべた。

「ありがとう」

初めて会ったとき、わたしの涙を乾かしてくれた、優しい声。

わたしは両手で顔を覆って、溢れる涙を拭う。

「わたしこそありがとう。わたしにとっても天音は特別だよ」

そう伝えようとしたけれど、涙に滲んだ声ではひとつも言葉を紡げなくて、

「やっぱり、なきむし」

と天音に笑われてしまった。おかしくなって、わたしも涙を流しながら笑う。

わたしにとって、天音は特別だ。

今まででいちばん悲しくて苦しくて、もうどうしようもなくなっていたときに、わたしを救って癒してくれた。

そしてわたしは天音に出会って初めて、誰かのことを救いたい、少しでも力になりたい、そのためなら自分にできることはなんでもする、と心から思えた。

生きていたら、わたしたちはこれからも何度も苦しい思いをしたり悲しいことを経験したりするだろう。自分の力ではどうにもからないことにも出会うだろう。

進路のことだってまだあいまいで、これからたくさんたくさん悩むことになるだろうと思う。

でも、そのときには、わたしの隣にもしも天音がいてくれたら、きっと乗り越えられるような気がした。

そして、天音が苦しんでいるときには、わたしが隣にいてあげたい。できる限りのことをしてあげたい。

ふたり肩を寄せ合って、もしもどちらかがよろけてしまっても、すぐに支えてあげられるように、いつも隣を歩いていたい。

わたしは生まれて初めて、そういうふうに思える人と出会えたのだ。

わたしたちはそうやって、少しずつゆっくりと、まばゆい希望の光が射すほうへと歩んでいくだろう。


< 200 / 200 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:2,151

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく

総文字数/169,361

恋愛(純愛)300ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
どこにいても息苦しくて 世界は暗い灰色で そんなとき、君の絵に出会った 「俺はお前が嫌いだ」 「お前を見てると苛々する」 冷たくて残酷な君だけど 「俺は天才だからな」 その手が描く色鮮やかな世界は あまりにも綺麗で あまりにも優しくて 「今からお前に世界の全てを見せてやる」 君が私の世界を変えてくれた 「もうお前とは会わない」 それなのに、どうして 私から離れていくの?
だから私は、明日のきみを描く
[原題]だから、きみを描く

総文字数/71,249

恋愛(純愛)140ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
その瞬間、恋に落ちた。 次の瞬間、失恋した。 この恋は、やめなきゃ。 この想いは、消さなきゃ。 彼女を悲しませたくないから、 あの笑顔を守りたいから。 それでも、どうしようもなく、 きみが好き。 だから、私はきみを描く。 きみへの『好き』を消すために―― * 〈望月 遠子〉 大切な親友の遥と同じ人を好きになる 〈広瀬 遥〉 遠子の親友で、彼方に恋をしている 〈羽鳥 彼方〉 棒高跳びで全国を目指し練習に励む * レビュー御礼 竹久祐さま/氷月あや様/aonaさま 花野美桜さま/湖ヅキ様/黒乃輝光さま 小粋優心さま/森井あさと様/和泉りん様 リンク作品 『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』 2017年12月 りぼん冬の大増刊号で漫画化 2018年1月 単行本発売
あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。
  • 書籍化作品
[原題]可視光の夏-特攻隊と過ごした日々-

総文字数/107,803

恋愛(純愛)220ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
息が苦しくて 全身が痛くて それでも私は走った 声のかぎりに叫んだ そして祈った 私の大切な人を見殺しにする 残酷な神様 せめて最後くらいは 私の願いを叶えてよ―― * 2016年7月スターツ出版文庫 原題 『可視光の夏-特攻隊と過ごした日々-』

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop