彼に会うまでの21時間
 ごめんなさい。ちょっと遅れます。歩道橋を渡る前に、彼にメールを送った。

 すぐに返事が返ってきた。

 もうすぐ料理が出来るよ。焦らなくていいからね。と書かれているけど、焦らずにはいられない。

 私はスマホを握り締めながら、歩道橋の階段を一気に駆け上がった。

 そのとき、どこからか、女性の悲鳴が聞こえてきた。

「引ったくりよ! 誰かあの男を捕まえて!」

 あの人が犯人なのだろうか。歩道橋の反対側から、黒のジャンバーを着た男の人が勢いよく私の方に向かって走ってくる。

 私の方に来ないで。と心の中でつぶやいても、犯人らしき男は私の方に向かって走ってくる。

「邪魔だ! どけ!」

 私はその男に突き飛ばされてしまった。
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