彼に会うまでの21時間
 とにかく彼に連絡したい。

 そう思っていても、なかなか人が見つからない。民家も何もない。車も走っていない。

 泣きながら、曲がりくねった山道を歩いていたとき、ようやく一台の車が走ってきた。

 私はその車に向かって手を振り続けた。どうか止まってください。私を助けてください。と願いながら。

 私に気づいたのか、その車は止まった。

 年配の男性が乗っている。

「こんなところでどうしたんだい」

 私はその男性に事情を説明した。

 現在位置と時刻を教えてもらった。

 ここは新郷村。現在の時刻は、十時二十三分。

「携帯電話を貸していただけませんか」

「いいよ」

 年配の男性から携帯電話を借りた。

 さっそく彼に電話を掛けた。

「もしもし、美奈です」

「美奈! 今どこにいるの? ずっと心配してたんだよ」

「ごめんなさい」

 彼に事情を説明した。

「なるべく早く行くから、待っててね」

「うん。気をつけるんだよ」

 電話を切って、携帯電話を年配の男性に返した。

 寒いから、早く乗りなさい。と言ってくれた。
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