豹変カレシのあまあまな暴走が止まりませんっ!
「もし水城ちゃんさえ良ければ、俺と付き合ってもらえないかな?」

「はい?」

私の家の最寄り駅まで着いて、そこからマンションまで向かう道のり。不意に木嶋さんが切り出した。

「どこにお付き合いすればいいですか?」
「いや、どこにとかじゃなく、お付き合い。分かるかな? 男女交際」
「……へ?」

……考えたこともなかった。


完全にフリーズしてしまった私を見て「驚かせてごめん」木嶋さんは困ったように笑う。

木嶋さんのことは大好きだけれど、あくまで先輩として、お兄さんとして。
恋愛対象って感じじゃないんだよなぁ……

それに――

「あの、私、一応、彼氏持ちってことになってるらしいので――」

実感はないけど。カップルらしいこと、何一つしてないけど。
それでも玲が、言ってくれたから。恋人にしてやるって。

「……だから、ごめんなさい」

これしか、絞り出せなかった。

「いや、僕の方こそ、困らせてごめん。忘れて」

木嶋さんは申し訳なさそうに頬を掻いた。


ちょっと気まずくなってしまった帰り道。
大通りから一本裏に入った静かな住宅街を、うつむく私と、唇を引き結んだ木嶋さんが、ゆっくりと歩を進める。
マンションの前まで辿り着いて、私は彼へ軽く頭を下げた。

「今日はありがとうございました」

「ううん。こちらこそありがとう。一日付き合わせちゃって、ごめんね」

「……そんな」

ごめんなさいなんて。謝ってもらうことなんて、何一つないのに。
最後のやりとりだけで、まるで今日一日が全否定されてしまったみたい。
嫌だな、こんなもやもやとした気持ちのまま別れるの。私はとっても楽しかったのに。
いつも優しくしてくれる木嶋さんを嫌いになったわけじゃない。
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