もう一度だけでも逢えるなら
「今夜は、どうもすみませんでした」
 水樹が私に向かって頭を下げた。とても申し訳なさそうな声だった。

「別に怒ってないよ。何も気にしないでね」
 私は優しく応えた。

 我ながら、少し成長したと思う。

 水樹から、本当の優しさとは何か。を教わる前までの私だったら、こんなに冷静に対応できていなかったと思うから。

「そう言ってもらえると、助かります」
 水樹は安心した様子で、私に向かって微笑んだ。

 笑顔も束の間。

 すぐに神妙な顔つきになり、みくさんの方に顔を向けた。
 
「先程の出来事を、紗優さんに話してもいいですか?」

「うーん……どうしよっかなあ」

 どうしよっかなあ。じゃなくて、話すのが筋でしょ。とは言わない。

 あくまでも冷静に対応する。

「さゆさんは、信用できる人ですか?」

「はい。信用できる人です」

「そうなんですか。それじゃあ、話してもいいですよ」

「それでは、紗優さんに話しますね」

 水樹はひと呼吸置いてから、現在に至るまでの経緯を私に話してくれた。
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