もう一度だけでも逢えるなら
「紗優さんの良いところは、おっとりしているところだと思います。良い意味でのおっとりです」

 そんなことを言われたのは初めて。いつも、とろいと言われるから。

「そう言ってくれると、すごく嬉しいな」

「いえいえ、どう致しまして。天使になってから、思うことがあります」

「どんなことかな?」

「この世界の人々は、働き過ぎだと思うんです。特に、日本人は」

 確かに、日本人は働き過ぎだと思う。過労死で亡くなる人がいるくらいだから。

 でも、みんなが頑張って働いているおかげで、高度な生活水準を維持している。

 綺麗な水が飲めるのも、明るい部屋で過ごせるのも、エアコンが使えるのも、働いている人がいるからこそ。

 資源が少ないのに、ここまで豊かな国になったのは、過去の日本人が頑張って働いてきたから。

「水樹も働いてるよね。朝早くから、夜遅くまで」

「僕なんか、働いているうちに入りませんよ。自分に与えられた役割をこなしているだけです」

 そんなに謙遜しなくてもいいのに。って思う。

 私は経理部に所属。会社の中枢の部署の一つ。私の仕事も、誰かの役に立っている。

 どんな仕事でも、必ず誰かの役に立っている。だから、仕事という。私はそう思う。

 いつになく真面目な会話。いつになく真面目なことを考えている。たまにはいいと思う。
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