もう一度だけでも逢えるなら
 テーブルを挟んで、水樹と向かい合って座った。

 通勤電車内での出来事。オフィス内での出来事。トイレ内での出来事。水樹に今日の出来事を話してみた。

 何かアドバイスをしてもらうために。

「一日一膳をしようとするのは、とても良いことだと思います。ですが、無理にしようとするのは、よくないと思います」

 確かに、水樹の言ったとおりだと思う。

 私は無理にしようとしていた。とにかく良い行いをしなくちゃ。焦っていた部分もある。だから、すべて空回りしたのかもしれない。

「しばらくは、自然体でいたらどうですか。善人になろうという気持ちがあるなら、いつかきっと、善人になれると思いますよ」

「うん。そうしてみる」

 善人……善人……。そもそも、善人とはいったい何なのか。誰のことを言うのか。

 人は誰でも欠点があると思う。今の自分は欠点だらけ。完璧な人間は私の身近にはいない。

 水樹は善人だと思う。私のおばあちゃんも善人だと思う。夢の中でしか会ったことはないけど、たぶん、くーちゃんも善人だと思う。

 三人とも、亡くなった人。

 ちーん……。
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