ピエリスの旋律

バレンタインの日、私につっかかってきて、そして私が怒らせたあの子。
2組の宮永さん。

彼女が楽しそうに笑っているのを見て、あの日去り際に言われた言葉が頭に浮かんだ。


『あんたのこと許さない。絶対苦しめてやる』


苦しめるって、これ?
何をすれば私がダメージを受けるって、考えてここまでしたの?

黒板の文字は、怖くて何度もは追えない。
私を否定する言葉の数々を、正面から受け止めることなんて出来ない。
だけど、嘘もあるけどほとんどが本当のことを元に書かれたことばかりで、彼女の執着というものを嫌でも感じた。

どう知ったのか、どうやって昨日の写真を手に入れたのか。
昨日彼女の姿は見てないけど、恐らく尾瀬くんが来ていたってことも知ってるんだろう。
黒板には私のことばかり書いてるけど、目立つ存在である彼とのことは“おかしいくらいに”一切触れていない。

にこにこ笑っている彼女の様子にぞっとする。
こんなに尾瀬くんが怒っているのに、好きな人が怒ってるっていうのに、どうしてそんな平気な顔をして笑っていられるの。

私、あなたに何した?
こんな形でたくさんの人に笑い者にされるほど、あなたの怒りに触れたの?

私が苦しむのって、そんなに楽しい?

もうどうしていいのか分からなくなって、何から弁解というか、違うって言っていいのかも分からなくて。
こんな風に尾瀬くんも巻き込んで怒らせて、それをまたたくさんの人に見られてしまって。

何もかも、私の望んでいないこと。

悲しいのか悔しいのか、色んな感情が自分の中で湧いては消えて、そして湧いて。
私は放心状態のまま、そっと涙を流した。


昨日はあんなに幸せだったのに。

あんなに胸を張って自分の夢を語れたのに、今は口に出すのも怖い。
こんなにも多くの人が私を笑って、嫌悪の目を向けた。
そんなに否定されること?そんなにもおかしい?


負の感情が次々に浮かんできて目の前が霞む。
思わず嗚咽が漏れた瞬間に、予鈴のチャイムが鳴り響いた。

< 78 / 79 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop