冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
「そんなの無用です」


私はそこまで言って一瞬口をつぐんだ。
だって、身の回りのことはヤケドさえよくなれば自分でできるもの。

でも、お願いがひとつだけある――。


「わかりました。それではひとつお願いです」

「はい、なんなりと」

「バスチューは決して命を粗末にしてはなりません。私のため、そして王太子さまのために生きてください」


私がそう言うと、バスチューは目を丸くして再び深く頭を下げる。

常に命がけであるように感じるバスチューのことが心配でそう言ったけれど、彼の心に届いただろうか。


「ありがとうございます。肝に銘じて」


バスチューは声を震わせそう言うと、部屋を出ていった。


「『もっとシャルヴェさまのことをお知りになって』か……」


私も知りたい。でも……。
王太子さまのほうがそう思っていなければ、迷惑なだけだ。

そう考えると、胸がチクンと痛んだ。
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