冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
「リリアーヌ。あなたが犠牲になるなんて……」

「私は犠牲にはなりません。必ず、幸せになります。そうしたらお母さまもユノヘスにお招きしますね」


私は必死に口角を上げた。

母と別れるのは辛い。
それに、私がいなくなれば母はひとりになってしまう。

それでも、これ以上戦いが起こり、孤児が増えるのだけはイヤだ。


母も最後は私の強い意志に折れてくれた。
もちろん、悔しさや辛さを呑みこんでのことだ。

しかし、母もまたサノワの平和を誰よりも望んでいた。


そして、いよいよ旅立ちの日がやって来た。


「リリアーヌ、辛ければ戻って来るのよ」


王宮の前に到着したユノヘスからの迎えの馬車に乗る前に、母と抱擁を交わす。

すると、おそらく私たちが王宮を去ってから母と初めて顔を合わせたであろう、父、すなわち国王は、その言葉に眉をひそめる。
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