冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
本当ならすぐにでも旅立つ準備をしなくてはならない。
でも、到底そんな気にはなれなかった。


ヤニックが部屋を出ていくと、途端に瞳が潤む。

今頃シャルヴェさまは戦に向けて準備をしているだろう。
もうあと何時間かすれば、もう永遠に手の届かない人になってしまう。


「シャルヴェさま……」


彼の名を口にした途端、堰を切ったように流れ出した涙は、とどまることを知らない。


「生きていて……」


胸が苦しくて、張り裂けそうだった。



「リリアーヌさま」


それからどれくらい経ったのだろう。
ベッドに突っ伏してひたすら涙を流していると、バスチューの声がした。


「はい」


私は慌てて涙を拭い、返事をした。


「失礼します」


すぐに入ってきたバスチューは、私が泣いていたことに気づいたようだ。
少し顔をしかめたけれど、それにはなにも触れることなく口を開いた。
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