冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
「ほら」

「ほら、と言われましても……」

「まずはお湯をかけよ。新しい傷は少し痛む。優しくな」


彼は、私に背を向け座ったけれど、やっぱりこんなの恥ずかしい。
彼の下半身には布が巻かれているとはいえ、立ちすくんだまま近づくことすらできない。


「あぁぁっ、でも……」

「じゃじゃ馬は、こんなことくらいできるだろう?」

「それとこれとは……」


無鉄砲に剣の前に立つことはできても、男性の背中を流すなんてしたことがない。


「こうしてもらうのが俺の夢だったんだ」

「夢?」

「この傷を愛おしいと言ってくれる女に、やっと出会えた」


そんなのずるい。
そんなことを言われたら……引き下がれないじゃない。

私は一度大きく深呼吸をしてから近づき、顔をそむけながら彼の背に湯を掛けはじめた。


「どこにかけている。ずれているぞ」

「……はい」
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