一輪の花を君に。
「先生、私もう大丈夫ですので、中庭に行ってもいいですか?」




「いいよ。行ってきな。」



「ありがとうございます。」




私は、そのまま真っ直ぐ中庭へと向かった。





随分と、お花が増えたな。




「頑張ったんだね。」




小さな花が、芽をつけてこの厳しい寒さに負けることなく、咲きほこってくれたことが嬉しかった。





「美空ちゃん!」




私に、声をかけたのは私より7歳年下で今は9歳の青峰千華(あおみね ちか)ちゃんだった。




「千華ちゃん、どうしたの?」





「千華ね、美空ちゃんが忙しかった間に、舞先生と、チューリップの球根を植えたの。」




『柏木 舞先生』は、主に小学1年生から3年生までを担当している施設の職員。





千華ちゃんは、プランターを指差し笑顔でそう言った。





だけど、チューリップの球根は10月から11月上旬に植えないと花は咲かないんじゃなかったっけ?




でも、千華ちゃんの笑顔を見てるととてもじゃないけどそんなことは言えない。






「あっ、美空ちゃん。具合は大丈夫?」





そんな事を考えていると、柏木先生が私に声をかけた。






「大丈夫です。」





「よかった。千華、プランターを温かいところに起きましょう?」





「え?ここじゃだめ?」





「うん、ここじゃちょっと寒いからね。千鶴先生が育ててる野菜のビニールハウスに入れてもらいましょう?」





「はーい。」




「美空ちゃん、千華に水やりのやり方を教えてほしいの。千華は、美空ちゃんみたいになりたいってお花に興味を持ったのよ。元々、千華はお嬢様に育ったから、土を触ったりしたことはなかったの。ここは、千華の成長に繋げるためにも、少しだけでも一緒に育ててあげて。」





「分かりました。」





「無理はしないでね。」





「はい。」





「美空ちゃん!一緒に行こう!」





私は、千華ちゃんに手を繋がれ、千鶴先生の野菜畑へと向かった。
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