一輪の花を君に。
#4
ーside中森ー


美空は、うまく深呼吸を続けてくれたけど、発作が怖かったのか、美空は俺の白衣から手を離そうとしない。



初めて見る、美空の姿。





俺は、そのまま美空を抱きしめた。



やばいな…。



本格的に、理性が持っていかれる。




けど、こんな風に頼ってくれるのは、出会って初めてのことだよな。



ましては、七瀬先生も見たことのない姿なのかもしれない。



「いいよ、俺に体重かけちゃって。」




震える美空の身体が、楽になるように俺はそう言葉にした。




「すみません…。」




「いいんだよ。それより、ずっと我慢してたのか?」





「…はい。」




「そうか。


なぁ。本当は怖い?」





「えっ?」





「喘息の発作。呼吸困難になると不安になる?」




「何で…分かるの?」





「美空は、喘息の発作が起きてからいつも俯くだろ?」





「先生…。」




「ん?」





「喘息の発作が起きるといつも怖かった。



呼吸困難になって、いつか本当に呼吸ができなくなるんじゃないかって。そう考えると、たまらなく怖い。」





「美空。


呼吸困難になったら、誰でも怖くなるよ。


けどね?俯いてばかりではだめだよ。


喘息の発作は苦しいよね?


でも、美空はたくさんその発作に乗り越えて来たんだ。


呼吸困難になっても、俺が美空を死なせない。


だから、安心して頼って。


俺は、何度でも美空を助ける。」





「先生…。」




「だからさ?美空。約束してほしい。」





「約…束?」





「ああ。我慢はしないこと。


それから、体調のことで嘘はつかないで。



嘘というか、隠さないでほしい。



小さな変化でも、ちゃんと教えて。



約束してもらえるかな?」




俺は、美空をさっきよりも強めに優しく包み込む。



徐々に、白衣を掴む美空の手が緩んできたことが分かる。





美空は、素直に頷いてくれた。





本当に嬉しい。




美空が、ここまで心を開いてくれたのは、少しでも俺を信じてくれているっていうことなのかな。




信じてくれるようになってくれたなら、よかったけどきっとまだ完全には無理だろう。




でも、この1歩は俺にとってかなり大きな1歩だ。




この温もりを、離したくない。




美空の傍に、これからもこうして一緒に寄り添っていきたい。




この本心は、中々言えないよな。





しばらくすると、美空は泣き疲れて眠りについたみたいだった。




美空を姫抱きにしてからベッドに移して、美空の眠りを見守った。
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