エリート上司の甘い誘惑
「もちろん、それ考慮した上で、こんだけ」



横から差し出されたスマホを覗き込むと、彼の指がゆっくりとスクロールする。
一軒、二軒、三軒……とまだ続く。



「電車乗らずにそこの駅周辺だけで」

「こんなにあるの?」



確かに、駅周辺は繁華街で飲食店が多いのはわかっていたけど、もう少し絞れるだろうと思ってた。


焼き鳥、居酒屋、鉄板焼き、中華にしゃぶしゃぶ。
その中で二軒、指差した。



「こことここは去年と一昨年で使ってるから別のとこにしよ」

「え、同じとこはダメですか? 覚えてるけど結構美味かったですよね」

「うちの女子は行ったことないとこに行きたがるから」

「プラス、料理が美味ければ女子からは文句でないわ」



向かいから望美が結構難しいことをいう。



「それはそうなんだけど、行ったことないとこで味を問われてもねえ」

「じゃあ、俺とさよさんで下見に行かないといけないですね」

「…………」



まあ、流れ的にそういうことだろうとは思っていたので、今更驚くことでもない。



「別に一緒じゃなくてもよくない? 手分けすれば」

「何言ってんですか、俺に女子の好みわかんないし」

「いやいや、味覚なんてそんな変わんないでしょ」

「まー、仲良く二人で決めなさいね」



二人で言い合っているうちに、いつの間に食べ終わったのか望美がランチトレーを手に立ち上がった。



「えっ、望美待ってよ」

「あんたまだ途中じゃない。先行くわよ」



明らかに、余計な気を回している。
しかも望美の場合、その動機は『面白いから』に違いない。
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