エリート上司の甘い誘惑
望美に茶化され、吹っ切れたのか一つ覚悟は決まった。


忘年会だ。
それまでに何がどう動こうと、忘年会にあの腕時計を付けていこう。


一通りの人間が集まるしお酌する時にでも袖口からちらっと見せることが出来たら、持ち主ならきっと少しは反応がある。


そう決めてしまうと、後は忘年会の店探しを残すのみだ。
居酒屋と焼き鳥専門店の二軒に二人で行ってみたが、東屋くんは約束通り酒も飲まなければ先日みたいに急に抱き寄せたりキスしたりもしなかった。



「警戒されて近寄れないのは哀しいですけど、ちょっといいなとも思うんですよね」



と、彼は言う。




「だって今まで全く圏外だったのが、男だったんだと意識してくれるようになったってことじゃないですか」



困って言葉が出ず眉尻を下げるばかりの私にも、顔をくしゃっと崩して嬉しそうに笑う。


そんな顔を見ていると、胸が苦しくなる。
手を振り払うことに、罪悪感が生まれてくる。


そもそも私は、こんな風に想われることは勿論、誰かを振ったりしたこともない。



「困ってるとこも可愛いしね」



本当に困ってしまう。


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