エリート上司の甘い誘惑
仕事を終えて、駅からの帰路。
今夜は一段と寒く、ちらちらと白いものが舞い始めふるりと身体を震わせてマフラーに顔を埋めた。
小走りでマンションの前まで来た時だ。
エントランスのすぐ近くに見えた人影に、咄嗟に電柱の影に隠れた。
……園田さんだ。
もう一度、そろりと顔だけ覗かせて見ると、間違いなく園田だった。
仕事の後の疲れにプラス、どっと気持ちが重くなる。
あの人、本当に何を考えているんだろう。
ろくなことじゃないには、違いないが。
問題なのは、このままでは家に帰れないということだ。
目の前を突っ切って無視して家の前に辿り着いても、玄関先で押し入られたら最悪だ。
「……どうしよう」
とりあえず、一度駅まで戻ろうかと思っていると突然、携帯の着信音が鳴った。
「わ……!」
しまった、と慌てて踵を返し早足で駅の方へ歩き出す。
その瞬間、園田と目が合ってしまったような気がしたけれど、怖くて振り向くことができなかった。