エリート上司の甘い誘惑
小走りでかけながら、携帯を手に取る。
着信表示の名前に、泣きたくなるくらいにほっとして。
「部長っ!」
『西原? どうかしたか』
私はつい、切羽詰まった声で電話に出てしまった。
かけてきたのは部長の方なのに、第一声が私を気遣うものだったのは、そのせいだろう。
「あの、」
助けてください部長、猿が!
と言いかけて、言葉に詰まる。
助けてくださいなんて言って、甘えていいのかどうか躊躇ってしまったからだ。
「えっと、なんでもない、です」
『西原?』
しどろもどろになってしまった私を訝しんでいるのがわかる。
駅までの道を走りながらで、どうしても息が切れる。多分、全部携帯越しに伝わってしまっている。