エリート上司の甘い誘惑
それからぽつぽつ、他愛ない会話をしながら直に駅の灯りが見えてきた。
周囲に人も多くなって、少し身体の力が抜ける。
「部長、ありがとうございました、駅に着きました」
後は、どこか暇をつぶせる店か、泊めてくれそうな友達でも探そう。
そう考えて、部長にお礼を言って電話を切ろうとしていたのだが。
『どこだ? 目立つところにいろ』
「え?」
『俺ももうすぐ着く』
え?
もうすぐ着く……て?
その言葉に、つい周囲を見渡す。
たくさん人はいるけれど、見当たらない。
駅前のバスロータリーの隅が見渡しが良く、立ち止まって再び視線を巡らせる。
「あの、部長?」
『どこだ? ……ああいい、わかった』
そんなセリフと同時に通話が途切れた。
まさか、と思う。
電話が繋がってから、多分五分程しか経っていない。
だけどそういえば……以前、初めて二人で食事をして一緒にタクシーで帰ったから私の家がどのあたりかは知っているはずだし、家も近いと言っていた。
とくとくとく、と心臓が期待して激しく跳ねる。
その私の目の前に、黒いセダンが停車した。