エリート上司の甘い誘惑
「居ないみたいだな」
車を路肩に駐車して、部長が車を降りたので私も慌てて後を追う。
マンション前にはもう、園田の姿はどこにもなかった。
「園田の姿見つけて駅に引き返すとき、目が合った気がするんです。私が逃げたの、わかったのかも」
何も解決はしていないのだけど、部長に変な話をさせずにすんだのもあり、とりあえずホッとした。
部長と一緒に玄関の前まで行ってもらって、そこにもやっぱり誰も居なかった。
「家の中は?」
「大丈夫です。合鍵は渡してなかったし……」
言ってしまってから、しまったと気が付いた。
付き合っていましたと、暴露したようなものだ。
気まずくなって言葉が続かないまま俯く。
だけど部長は「そうか」と短い返事が一つあっただけで、それ以上何も聞いてもこない。
やはり給湯室での会話を聞かれていたのだろうか、それとも察してしまったのかもしれない。
そもそも、これまで無関係ならこんな風に付きまとわれてること自体不自然な話なのだから。