エリート上司の甘い誘惑
観念して、溜息をつく。
ここまで迷惑かけておいて、何も説明しないのももう不自然だ。
「……付き合ってたんです、以前」
「そうか」
「今は、ちゃんと別れてます」
「わかってるよ」
柔らかい、穏やかな声にほっとして目線を上げる。
そしたらまた、私は部長の蕩ける視線に捕まった。
この目に見つめられるといつも、胸の奥が苦しくて仕方なくなる。
じわ、と涙の滲んでしまった目を見つけられて、部長の眉が顰められさっきの冗談がぶりかえされる。
「……怖いなら、うちに来い」
「あ、いえ! 違います、これは」
慌てて両手を振って、笑う。
ついでに目尻も拭った。
現金なもので、怖いなんてものは部長が来てくれたことで綺麗になくなってしまっている。
「安心しただけです。大丈夫です、もう。すみませんでした、来ていただいて」
心配してくれたことが、照れくさくて嬉しくて口元が緩んだ。