エリート上司の甘い誘惑
ああ、だけど。
このままだと、部長はすぐに帰ってしまう流れだ。


そう気づけば、寂しさがつい引き留める言葉を探す。


“よかったら、コーヒーでも“
浮かんだそのセリフは以前東屋くんに怒られたもので、つい躊躇った。


だけど多分、目だけはどうしても、縋ってしまっていたのかもしれない。
部長の表情が、ふっと真摯なものに変わる。


こく、と喉が鳴ったような音が聞こえたのは、気のせいだろうか。
ゆるりと部長の手が伸びてきて、私の前髪に触れた。


それから横髪を撫で、耳の辺りで止まる。
肌には触れるか触れないくらいの、そのギリギリの手のひらから熱が伝わってくるようで、知らず知らず吐息が漏れた。


あったかい。
部長の手は、すごくあったかい。


身をゆだねるかどうか以前に、それだけで融けていきそうで。
つい恍惚と、目を細めた時だった。



「…………西原」

「……はい」

「寂しいなら、添い寝してやろうか?」

「え?」



そのセリフと同時に、ぴんっと額を指で弾かれた。

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