エリート上司の甘い誘惑
「誘ってるようにしか見えない。玄関開けて、逃げろ。早く」
「さ、さそっ……! 違、え? 逃げ? 誰から?」
「俺からだ」
急かされながら慌てて玄関の鍵を開けた。
何の話だと首を傾げながら、ドアを開けて振り仰ぐとドアに手をかけた部長が私に向かって腰を屈めていた。
え。
……近、い。
「逃げ遅れたな」
だから、誰から。
と問う暇もなく、頬を柔らかい感触が触れた。
ちゅ、と一瞬吸い付かれると、すぐに離れていってしまう。
何一つ、反応できないうちに、ドアは徐々に閉まり視界は狭くなった。
「何かあれば電話しろ。近いからすぐに来れる」
その言葉を最後に、ばたんと扉が私と部長の間を隔て、私は急に足の力が抜けてへなへなとその場に崩れ落ちる。