エリート上司の甘い誘惑
「さよさんは、お茶汲みとか嫌じゃないんですね」
「私はね。珈琲も紅茶も好きだし、ブレイクタイムある方が仕事が進むから」
「でも嫌がる女性社員多いじゃないすか」
「女の仕事だってアカラサマな態度とられりゃ腹立つけどね。うちは藤堂部長も高見課長もみんなちゃんとありがとうって言ってくれるし」
そういう面で、恵まれたオフィスだなあとつくづく思う。
園田みたいな男にうっかりひっかかったことを除けば、だけど。
こぽぽぽ、とメーカーから音がし始めたら、もうすぐ出来上がりの合図だ。
コーヒーサーバーを手に取って、砂糖もミルクも入ってない空のカップに注ぎ、東屋くんに手渡す。
「どうぞ」
「あざっす」
ただの珈琲なのに。
随分と嬉しそうに目をキラッキラさせているものだから、逆になんか気恥ずかしい。
「なんか、いいですよね」
「何が」
「嫌々なら申し訳ないって思うけど、快く淹れてもらえるならやっぱ自分でするより嬉しい。甘えかもしれませんが」
「有難みが薄れれば甘えだろうけどね。ようは気持ちが大事ってことじゃない?」
「感謝してます」
「よろしい」
カップを恭しく掲げて真面目な顔で言う仕草が、可笑しかった。
くすくす笑いながら残りのカップにコーヒーを注いでいく。
東屋くんは、まだカップを持ったままその場に留まっていて、何か話でもあるのだろうかと不思議に思っていると。
「さよさん、今度飯一緒に行きませんか」
「は?」
突然のお誘いにたじろいで、うっかりコーヒーを零すところだった。