エリート上司の甘い誘惑
コーヒーを人数分乗せた大きなトレーを手に、給湯室を出た。
本当なら一番最初に部長に持っていくべきなんだけど、トレーに乗せたままうろうろするのは危ないということで、いつも手前のデスクから先に置かせてもらっている。



「いつもありがとー」

「ありがとうございまーす」



営業補佐の女性社員同士は、比較的仲が良い。
特に、同期の柳原望美とは気が合って、たまに二人でも飲みに行く間柄だ。



「あー、助かる。ありがとー」



望美はどうやら二日酔いらしく、眉間を指でつまみ頭痛を抑えるような仕草を朝から何度か見せている。
二次会でかなり弾けて飲んだのだろうか、弱いくせに。


それから、奥から一つ手前が高見課長のデスクで、いつも書類が山積みになっている。



「課長、資料がごちゃまぜになりませんか。見ててヒヤヒヤするんですが」

「大丈夫、どこに何があるかは大体わかってっから!」

「大体じゃ困ります」



なんとか隙間を見つけようと思ったが、どこにおいてもひっくり返しそうで直接手渡した。
大体、身体の大きな人なのでみんなと同じデスクの筈なのになぜか手狭に見える。


窮屈そうで、ちょっと気の毒だ。


そして、一番奥。



「藤堂部長、お疲れ様です」



ちょっとだけ、声が裏返る。
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