エリート上司の甘い誘惑
「ありがとう」
目を通していた書類から、視線を上げて口元をやんわりと上げる。
大人然として穏やかで、それでいて仕事中はいつもきりっと背筋を伸ばす、藤堂部長は私の憧れの人だ。
他の営業が狼狽えるばかりのクレームや取引先の横暴にも毅然として対応するし、頭を下げるべき時には下げる。
それでいて不当なものには一歩も引かない、その頼もしさはそこらの若造では得られない。
部長になった経緯は前部長の女性問題があってのことだけど、それがなくとも昇進はそう遠いことではなかっただろうと、誰もが認めるエリートだ。上役の信頼も厚いからこその抜擢だと聞いている。
その上背も高く見目も麗しいというのだから、当然ながら女性社員のファンも多い、が……どちらかというと近寄りがたい雰囲気があるようだ。確かに、切れ長の涼やかな目元を更に細めて、書類に目を落としている時は声をかけ辛い時もある。決して怖い人ではないのだけど。
しかもばっちり、私の五つ年上だ。
園田は二つ年上で、入社時の私の指導をしてくれた人だったから頼りやすくて自然な流れで惹かれたけれど、藤堂部長は憧れ過ぎて逆に恐れ多いというか。
でも洗面所の腕時計を見た時に、ちょっと妄想してしまった。
なんとなく、イメージがぴたりと合うような。
つい目が袖口を確認する。
ちらりと腕時計が見えたけど、どんなものかはっきり見えなかった。
「昨日」
「えっ?」
今日も尊敬してます!
と心で念じながら会釈して、仕事に戻ろうとしたのだが。
急に話を振られて、つい肩が跳ねた。
目を通していた書類から、視線を上げて口元をやんわりと上げる。
大人然として穏やかで、それでいて仕事中はいつもきりっと背筋を伸ばす、藤堂部長は私の憧れの人だ。
他の営業が狼狽えるばかりのクレームや取引先の横暴にも毅然として対応するし、頭を下げるべき時には下げる。
それでいて不当なものには一歩も引かない、その頼もしさはそこらの若造では得られない。
部長になった経緯は前部長の女性問題があってのことだけど、それがなくとも昇進はそう遠いことではなかっただろうと、誰もが認めるエリートだ。上役の信頼も厚いからこその抜擢だと聞いている。
その上背も高く見目も麗しいというのだから、当然ながら女性社員のファンも多い、が……どちらかというと近寄りがたい雰囲気があるようだ。確かに、切れ長の涼やかな目元を更に細めて、書類に目を落としている時は声をかけ辛い時もある。決して怖い人ではないのだけど。
しかもばっちり、私の五つ年上だ。
園田は二つ年上で、入社時の私の指導をしてくれた人だったから頼りやすくて自然な流れで惹かれたけれど、藤堂部長は憧れ過ぎて逆に恐れ多いというか。
でも洗面所の腕時計を見た時に、ちょっと妄想してしまった。
なんとなく、イメージがぴたりと合うような。
つい目が袖口を確認する。
ちらりと腕時計が見えたけど、どんなものかはっきり見えなかった。
「昨日」
「えっ?」
今日も尊敬してます!
と心で念じながら会釈して、仕事に戻ろうとしたのだが。
急に話を振られて、つい肩が跳ねた。