エリート上司の甘い誘惑
「大丈夫だったか?」
「えっ……え?」
「二次会、行かなかっただろう。体調でも悪いのかと思ってたんだが」
一体、何のことを心配されているのかと動揺して挙動不審な態度を取ってしまった。
「あ、ご心配をおかけしました。元々夜は予定があって、二次会は欠席で前もって伝えてあったんです」
「ああ、そうだったのか」
「はい」
部長に心配していただけるなんて、それだけで最悪の一日がちょっと最悪くらいまでに回復した気がする。
「二次会、何時ごろまでかかったんですか?」
「いや、俺も行かなかった」
「そうだったんですか」
ああ、と短い返事があってそこで話は途切れ、藤堂部長の目線が手元の書類に戻る。
私はもう一度会釈して、トレーを片してから再びパソコンに向き合う。
ふと、気が付いた。
もし、腕時計の主が会社の誰かだったなら。
もしかしたら、昨日二次会に行かなかった人の中の、誰かだろうか。
だとすれば、かなり絞られる。
いや、そもそも私はどれくらいの間飲んで、あの店で誰かにあったのは何時頃だったのだろう。
かなりのピッチで飲んだ覚えはあるから、それ程長時間ではなかった気がする。
多分、高見課長も欠席だっただろうけど、あの人は除外だ。
愛妻家だということはとっくの昔から周知の事実であったが、子供が生まれてからのデレっぷりはその比じゃない。
脇目も降らず家に帰ったことだろう。
そうなると、藤堂部長と、後は。
「昨日の二次会? ほとんど参加してたんじゃない?」
昼休み、社員食堂で望美にそれとなく聞いてみた。
「ほとんど、ってことはしてない人もちょっとは居たんだ?」
「はっきり覚えてないけど。何、気にしてるの?そんな気を使わなくてもいいんじゃない?」