エリート上司の甘い誘惑
気を取り直して。
家庭的ってのからは離れるけど、英語とか。
バイリンガルな感じは格好いいけど仕事で使うこともまずないし、だったら習ったところでどこで披露するんだ、っていう。



「……女度って、どうやったら上がるの?」



コピー機の上で頬杖をつき、極々、小さな呟きのつもりだった。
皆働いてるフロア内だけれど、コピー機は隅っこにあるしガーガー煩いし、誰にも聞かれていないと思っていたのに。



「ぶふっ……」



吹き出すような声が聞こえて、驚いて肩が跳ねた。


聞かれた。
しかも、この声。


恐る恐る、振り向くとやっぱりそこには思った通りの人が、口元を抑え肩を震わせて立っていた。



「部長っ……いつからそこに」

「いや、たった今、だが」



がーっと一気に顔の熱が上がる私だが、部長はこほんと咳払いを一つして表情を立てなおす。
ひぃ、一人で冷静になられると、なんだか余計に私が一人で恥ずかしい!



「コピーを一部取ろうかと」

「そんなのは私達に頼んでください!」



お願いですから!
そしたら、こんな呟きを望美か他の誰かに聞かれても部長に聞かれることはなかったのに。


部長は私達が忙しそうにしている時は、こういった雑務も自分でやってくれたりする。
だけど私達からすればそれも仕事の内なんだし、と思うのだけど。


恥ずかしさで泣きたくなりながら、部長の手にある書類を受け取る。
逸らそう、話をそらしてしまおう。

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