エリート上司の甘い誘惑
「私が取っておきますね、一部でいいんですか? 今の分が終わったらすぐ……」
「……西原」
「はい?」
「お前は、何をコピーしてるんだ?」
「え」
言葉の意味がわからなくて、きょとんとその顔を見上げていた。
部長の目線は、私ではなくコピー機の、紙の排出先にまっすぐ落ちていて。
私の視線もつられてそちらへ落ちた。
「ええっ?! なんで?!」
コピーされたものが出てきているはずのそこには、ひたすら白い紙だけが排出されていた。
がーがしょん、がーがしょん、と音は派手だが何もなされていない紙が結構なハイペースで吐き出されてくる。
中途半端に原本の紙の影だけが印刷されているのが辛い。
「なんで真っ白なの? あああ! 止めなくちゃ!」
「落ち着け。なんでも何も」
コピー機の前でおろおろする私の後ろから、にゅっと手が伸びてきて停止ボタンを押した。
そのままその手は、原本が挟まれている蓋をぱかっと開ける。
「まあ、こういうことだろうな」
「……ですね。すみません」
そうですね。
他に考えられません、私が裏返しで原本を挟んでしまっただけのことです。
恥ずかしすぎる。
女度がどうのと呟きを聞かれた上で、更にこれ。
「…………ストップしたことだし、先に部長の、コピーしますね」
項垂れながら、なかの原本を部長のものに入れ替えようとしたのだけれど。
「後でいい」
と言いながら、部長はくるっと原本をひっくり返して蓋をしてしまった。