エリート上司の甘い誘惑
「え、三択?」

「1、大人しくアンタの家に送られる。2、俺の家にお持ち帰りされる。3、そこのラブホに連れ込まれる」


掲げた手の指が、いち、に、さん、と増えるのを見ていると、今度はその手がとある方を指差す。


ネカフェの向こう、ずずっと奥の方にキラキラ可愛らしい看板が見えた。


間違いなくラブホテルだ。
かなり遠目だが、視力2.0の私にはバッチリ見える。


「どれにする?」

「え、あの、他の選択肢は」

「決まらないなら3で強制連行するよどのホテルにする? あ、また三択だね」


知ってる!
あの看板辺りには三軒ホテルがあるの知ってる!


「1でお願いします!」


キラキラキラキラ、ラブホの看板より禍々しい笑顔に負けて、大人しく送られることになった。



そこから、東屋くんのご機嫌は家に着くまでなんとまあ、悪かった。
電車の中でも、駅からの道のりでも、おかげで私の酔いはキレイに醒めたが、ふてくされた顔は子供のようだった。


まあ、あの禍々しい笑顔よりはよっぽどいいけども。


駅からは然程遠くない。
五分程、気まずい時間を消費して、ようやく家の前に着いた。


「あの。今日はありがとね」


そろそろご機嫌直してくれないかなあ。
明日からの仕事に響くの嫌だし、と努めて明るい声で礼を言ったのだが。


「いーえ」


子供か。
それでも、すぐに駅に戻っていく様子もないから、もう一言付け加えてみることにした。


「あ。良かったらコーヒー飲んでく?」


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