エリート上司の甘い誘惑
「ちょっ、」
眩暈がしそう。
冬の夜の空気は冷たいのに、顔の熱はお構いなしに上がる。
年下のくせに、といつもなら突っぱねられたのに、その年下に今気圧されている。
首の後ろを支える手の指が、髪の中を潜って地肌を掻いた。
ぴく、と肩が跳ねた。
「東屋くんっ……」
身体が身構えて一層固くなる。
けど、彼の指は宥めるように繰り返し撫で続け、まるで自分が甘やかされているような気持ちにさせられた。
いや、だめだ。
そんな風に甘やかしてもらうような関係じゃない。
そう、脳内で抵抗しているのに。
「なんで、自分の部屋に帰りたくないんですか」
彼の声は甘くて優しくて、抵抗する力を削ごうとする。
「や、別に、ほんとに、」
「うん、だから。一人で部屋に居たくない理由を知りたいだけ」
てっきり強引に迫られるのかと、予想違いの状況に軽く頭の中が混乱した。
だけど、素直に弱い自分を見せるなんてことが簡単にできるはずもない。
「………………、……………………別に」
「ぶふっ」
たっぷりの間を空けた後、ふらふらと目を泳がせて言った私に、東屋くんは小さく吹き出した。
「笑うなら離して」
「だって可愛いから。一人で帰るのが寂しいんだ」
「んなこと一言も言ってないでしょ?!」
「じゃあ、まだ園田が忘れられないとか」
「違うわよ!」
かっと頭に血が上って睨み上げても、東屋くんは変わらず笑顔だ。
少し首を傾げたところが、絶妙に生意気だった。