エリート上司の甘い誘惑
「やだっ!」
その拳で、彼の横っ面を叩いてしまった。
衝撃で逸れた唇に、ぴりりとした痛みが走る。
「ってぇ」
漸く離れた彼が殴られた片頬を抑え、眉を顰めた。
「ご、ごめんっ……」
いくらなんでも、拳で殴ることはなかったかもしれない、と後悔が少し。
だけどそれ以上に、「怖い」と「恥ずかしい」が同じくらいの比率で私の中を占めていて。
顔も身体も熱い。
痛いくらいに、心臓が跳ねて苦しい。
伏せられていた彼の目が、再び私を見る。
その瞬間、弾かれたように走り出し、躓きながらマンションの中に逃げ込んだ。