エリート上司の甘い誘惑
部長が、そんな風に簡単にキスする人だとは思いたくない。
でもあのキスは、とても優しくて暖かかった。
ただの記憶に過ぎないキスに執着するのは、あの一瞬ちゃんと気持ちが通じ合ってのキスだったのだと信じたいのかもしれない。
頭で上手く自分の気持ちがまとまらずしどろもどろに説明すると、望美の返答はやっぱりこうだ。
「気持ちがあったら嬉しいってことでしょ。だったら相手が部長か東屋くんだったら最高じゃない」
「部長はともかく東屋くんはヤダ!」
夕べのキスを思い出すとむかっ腹が立って、即座に否定の言葉が飛び出る。
同時に思い出したのは、彼の告白だった。
そうだ、突然のキスで腹が立って寝不足になって、全部吹っ飛んでたけど、彼は私にちゃんと気持ちは示してくれたのだ。
思い出すと何か居た堪れなくて恥ずかしくなって、自分を保てなくなる。
ぶるん、と頭を振って、今はその記憶を追い出した。
「ってか、結局妄想の域を出てないし!」
ああかもしれない、こうかもしれない。
もう頭がパンクしそうだと、声を大にして叫んだ。
個室居酒屋、大活躍だ。
「そうよ妄想するならイケメンに限るでしょうが。何で東屋くんは頑なに拒否? 昨日一体、グーパン食らわすほどの何があったのよ?」
不意に、望美の矛先が変わった。
ぎく、と頬が引き攣った私に、彼女は一層笑みを深くする。
そうか、これを聞きだすのが目的だったか、と気付かされたがもう遅い。
結局その後、昨夜の出来事を洗いざらい喋らされてしまった。