エリート上司の甘い誘惑
望美の予測という名の妄想は、二人の容疑者の名前を上げることになったのだが、結論は当然出るわけがない。
私が思い出すか行動するか、もしくはしびれを切らした相手が行動するかしなければ何もわからないままだ。
ちら、と思いついたのは。
あの腕時計を付けて出勤してみたら、どんな顔をするだろう、ということだった。
相手がとことん、しらを切るつもりなら無反応かもしれないけれどちょっとは表情が変わったりしないだろうか、と少し期待を持つ。
ある程度確証が持てたらやってみようか、と考えつついつも通り日々の業務をこなし、いつも通り気づいたら近くにいる東屋くんを30cmの定規で牽制する毎日だ。
給湯室でコーヒーを淹れていると、ほくほくと嬉しそうに近寄って来る彼に定規を突き出して距離を取る。
「それ、常備してるんですか」
「常備するようになったんですー。コーヒーなら淹れてあげるからそれ以上近づかないでね」
「ひでえ。俺だって場所くらい弁えるのに」
あんなマンションの真ん前でキスやらかしといて、信用できるか!
もしかしたら住人に見られたかもしれない、と思うと恥ずかしくてしょうがない。