エリート上司の甘い誘惑
何かと東屋くんがちょろちょろするから、おかげで園田が近づいてこなくていいけれど。
よくよく考えれば、出産で里帰り、しかも臨月じゃなくて早めに帰ったって言ってたから、短くて三ヵ月……下手したら半年近く居ないってことなんじゃないの?
なんてことだ、それでは園田は放牧状態、やりたい放題だ。
ハメ外す気満々の様子だったし、暫くは気が抜けそうにない。
それにしても、園田はなんで私に執着するのだろうか。
幼馴染みと結婚して、もうすぐ子供も生まれるというのに、浮ついてること自体問題だが、それだけなら何も私じゃなくてもいいはずだ。
園田が私を忘れられないだとかそんな気持ちでないことは、ひしひしと伝わる。
舐められてるのだろうか、と思えば、それが一番しっくりときた。
振られても誰にも話さず、引き下がったからだ。
口が堅そうだから、遊び相手には都合がよい……とか、きっとそんなところだろう。
シェアリングの資料をぱらぱらとめくりながら、大きなため息が落ちた。
それはしっかり、隣に座る部長の耳に届いていたらしい。
「そんなに憂鬱か」
声をかけられて、慌てて背筋を伸ばす。
今日は午後から半日、システム課のシェアリングの為に時間を空けてある。
当初の予定通り、部長の同行だ。
「すみません、考え事を」
「上司とシェアリングなんて気が重いか?」
「ち、違います!」
あたふたと否定すれば、くくっと喉を鳴らしたような笑い声がする。
「ひど。からかいましたね」
資料を持ち上げ、口元を隠すようにして目だけで藤堂部長を睨む。
彼はちょっと眉をよせて苦笑いをすると、私の持つ資料をぱちんと指で弾いた。
「つまらないとは思うが」
「だから違いますって」
「ちゃんと資料に目を通しておけ。シェアリング中に一回でも発言出来たら、美味い飯食わせてやる」
え。
と、一瞬で頭が真っ白になる。
美味い飯……また部長とお食事に行ける。
それは嬉しい。
が、そこじゃない!
「発言するんですか?!私が!」