イケメン御曹司のとろける愛情
 土曜日のオフィスに円崎さんと一緒に行ってどうするの?

 私と会うまでの三十分間になにをするつもり?

 疑問だけが頭の中をぐるぐる回って、いつの間にか真緒ちゃんの声まで頭の中に響く。

『それか、“キミの演奏が好きなんだ”とか甘い言葉を言う男と、体だけの関係になっちゃうパターン。都合のいい女にされてるのに気づかないの』

 気がつけば頬が涙で濡れていた。手の甲で拭うと、にじんだマスカラで涙は黒かった。

 こんな顔じゃ翔吾さんに会えないよ。っていうか、そもそも翔吾さんは私との待ち合わせに来てくれるの……?

 不安すぎて心臓が痛い。

 女子トイレに行って、目の下ににじんだマスカラを拭きとって、ポーチからマスカラを出した。でも、涙目になっているせいで、うまく塗れない。

 こんな顔じゃだめだ。円崎さんに勝てない。

 そう思って苦笑した。そもそも私が円崎さんに太刀打ちできるわけがない。メイクしたって着飾ったって、中身が違うんだから。

 なにもかもに自信を失って、全身から力が抜け、マスカラを塗ろうとした手を下ろした。マスカラをポーチに戻してバッグに入れる。
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