フェアリーテイルを夢見てる
「だからどうか、これからも、君の名を呼ぶことを許しておくれ」


その手も声も小刻みに震えていました。

その時は正直「?」でしたが、きちんと状況を把握した今、「私を身代わりにするなんて失礼しちゃう!」と抗議するべきなのかもしれません。

だけどとてもじゃないけど、私にはそんな事はできません。

巧さんは私の救世主。

それで彼が癒されるのなら。
私を呼ぶ事で巧さんの心が救われるのならば、いくらでもそうして下さい、と思いました。

それがせめてもの恩返し。


……いえ。
それくらいではまだまだ「恩」を「返」せている事にはならないのですが。

だって、本物のケイ子さん(正確にはそれ自体もフェイクなのですが、とにかく便宜上そう言います)を想いながらであったとしても、巧さんが私を大切に扱ってくれている事に変わりはないのですから。

彼の庇護の下、ゆったりのんびりぬくぬくと生活できているのですから。

私自身は何の努力も働きかけもしていないのです。

むしろ、恋焦がれているその人の名を私に託してくれてありがとう、という気分です。

だから私は『ケイ子』という名に誇りを持って、胸を張って生きて行きたいと思います。

そんな風に重大な秘密を共有している私達は、とても深い絆で結ばれているのでした。


……と、ここまで語っておいてなんなのですが。

何だか大分話がそれてしまったように思います。
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