フェアリーテイルを夢見てる
とにかく高層階からの景色を堪能するのが万作さんにとっての最重要事項でしたので、高ければ高いほど理想に近付くのです。

そのような場所でごく親しい友人のみを招いてホームパーティをしたり、もしくは一人で新しい土地開発の計画を練ったりお茶を飲みつつ読書したりホームシアターを楽しんだり、ただただぼ~っと過ごしてみたりしたかったようです。

この上なく贅沢で優雅な一時になるであろうと。

そして検討の結果、52階が万作さんの居住フロアとして割り当てられる事に決まったのですが、彼は更なる要望を追加しました。

「ビル内で唯一の「住居者」となる訳だから、防犯上の理由で、そこの持ち主が私である事は関係者以外には知られないようにしたい。そして大勢の目につく場所に52階行きのエレベーターは設置せず、階段室からも当該フロアには入れないようにしておきたい」と。

もっともらしい主張ではありましたが、しかし、それを聞いた皆さんはピンと来たそうです。

万作さんがそのような提案をした最大の理由は、そのお部屋をごく一部の人しか知り得ない、「秘密の基地」的な物にしたいからなのだろうと。

おそらく幼少時代から抱いて来たのであろうその夢を、財力と余暇を手に入れた今、実現させようとしているのだろうと。

万作さんは晩年まで好奇心や冒険心を持ち続けた、「永遠の少年」ともいうべき、とてもおちゃめで愉快な方だったらしいですから。
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