フェアリーテイルを夢見てる
「B.C. building INC.」では泊まり込みになるような業務は発生しませんし、就業中に入浴する必要などないのですから。

そのまま残しておいては意味がないし、かといって別の空間に造り直すとしたら、これまた費用がかかってしまう訳で、やはり52階は住居として維持した方が良いだろうという結論に達しました。

そうして千一郎さんとご家族があれやこれや悩んでいる間に、52階の室内にはどんどん埃が溜まって行き、全体的にどんよりとした澱んだ空気が漂うようになってしまいました。

部屋というのは誰かがそこで生活して風通しを良くしておかないと瞬く間に傷んでしまうものなのです。

なので、ひとまず知念家のお手伝いさんが定期的にお掃除に来る事になったのですが、かといっていつまでもその状態のままにしておく訳にはいきません。

そこで千一郎さんは親戚一同に「他人に明け渡すのは止めた。身内の中で誰か希望者がいれば貸し出す事にする。室内のメンテナンスさえきちんとしてもらえれば家賃はいらないし、税金もこちらで負担する。ただし、毎月納めている管理費や水道光熱費、食費等の生活費は自身に捻出してもらう事になるが、どうだろうか?」と呼び掛けました。

そこですぐさま反応したのが巧さんだったのです。

「若いうちに独り暮らしを経験しておきたいと思っていたので、ぜひとも私に住まわせてはもらえませんか」と。
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