クールな次期社長の甘い密約
どうしてこんな仕打ちをされなきゃいけないんだろうと悲しくなり、溢れてくる涙を必死で堪えていた。
やっぱり私が専務を拒んだからなのかな……
益々冗舌になる木村さんの話しを聞きながら、臆病だった自分を責めていたが、よくよく考えてみれば、一時でもこんな私が専務の彼女になれたのだから感謝しないといけないのかも……と思い始める。
儚い夢と消えた専務との恋だけど、超地味子だった私を激変させてくれたんだもの。それだけで十分じゃない。所詮、身分違いの恋。成就するワケがないんだ。
森山先輩の制裁は恐怖だけど、振られたんだから仕方ない。
そう思ったら気持ちが少し楽になり、木村さんのおノロケ話しも気にならなくなった。
それから間もなく車は都内に入り、もうすぐ家に帰れると安堵した時だった。なぜか聞いた事もない駅の前で車が止まる。すると、今までずっとスマホを眺めていた専務が顔を上げ、吐き捨てる様に言った。
「……降りろ」
えっ……こんな知らない駅で降ろされるの?
一瞬、焦ったが、振られた私がこの車に乗っている方がおかしいんだと納得して素直にドアを開ける――と……
「茉耶ちん、どこ行くの?」
私の手を掴んだ専務が目を丸くする。
「えっ? だって専務が降りろって……」
「誰が茉耶ちんに降りろなんて言った? 車を降りるのは、木村だ」
それを聞いた木村さんが「どうして私がこんなとこで降りなきゃいけないの!」って激怒した。しかし専務は躊躇う事なく言い切る。
「勘違いするな。俺の女はお前じゃない。茉耶だよ」