クールな次期社長の甘い密約

「仕事が終わった後、専務に色んな所に連れて行ってもらったんですよ。凄く楽しくて、なんだかプライベートの旅行みたいでした。その中でも一番感激したのは、二人で見に行った夜景かしら。

難航していたクライアントとの交渉が上手くいったは、私のフォローがあったからだって、支社の人達との食事をキャンセルしてわざわざ連れて行って下さったの」


木村さんの話しはまだまだ続き、もう三十分以上、一人で喋りまくっている。当然私は内心穏やかではなく、下を向いたままスカートをギュッと握り締めていた。


「あ、それと、五日目にホテルを変わったんですが、向こうのミスで私の部屋がダブルブッキング。有り得ませんよね~。そうしたら専務が自分の部屋はツインだから一緒にって言って下さって……ふふふっ、助かりました」


えっ、専務と木村さんが同じ部屋に?


弾かれる様に顔を上げ、専務の方に視線を向けるが、彼はスマホのディスプレイを眺めたまま何も反論しない。


木村さんが言ってる事は事実なんだ……二人は出張中に寄りを戻した。そういう事なんだね。その事を私に知らせる為に空港まで迎えに来させた。


そう考えれば、専務が電話で言っていた"ホテルの予約は取れたか?"の意味も、慌てて電話を切った理由も分かる気がする。専務は木村さんと過ごす為に倉田さんにホテルの予約を頼んでいたんだ。


酷い……私が嫌いになったのなら、こんな回りくどい事しなくてもいいのに。電話かメールで「終わりだ」そう言ってくれれば済む事なのに……

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