クールな次期社長の甘い密約
どうしてこのタイミングで木村さんの話しをするんだろうと眉を顰めるが、専務は構わず話しを続ける。
「で、木村に誘われたってのも事実だ」
「えぇっ?」
思わず大声を上げ、振り返って縋る様な目で専務の顔を凝視した。
「うそ……ですよね?」
でも専務は首を小さく左右に振り「本当だ」って真顔で呟く。次の瞬間、体の奥が燃える様に熱くなり、苛立ちに似た感情が込み上げてくる。
「いい顔してる。車に乗ってた時と同じ顔……嫉妬してる顔だ。その顔を見てるとゾクゾクする」
「なっ、からかわないで下さい!」
冷静さを失い強い口調で怒鳴っていた。男性に対してこんなに感情を露わにしたのは倉田さんにブチキレた時以来だ……
「本当の事を言うと、その顔を見ていたくてあえて車の中では木村の作り話しを否定しなかったんだ」
そんな……私が嫉妬しているのを見て楽しんでいたって言うの?
なんだか無性に悲しくなり、専務から目を逸らす。
「……酷い」
「おいおい、酷いのはどっちだ? 俺はお宝を目の前にしてお預けくらったんだぞ」
「あ……それは……」
しかし専務は言い訳をする間も与えてはくれず、今度は正面から私を強く抱き締める。
専務に抱かれたまま、まるで時間が止まったみたいに立ち尽くしていたのだけど、暫くすると専務の掠れた声が頭上から聞こえてきた。
「心配するな。木村とは何もない」
「本当……ですか?」
「あぁ、だから……」
「だから……?」
「だから俺に、ご褒美をくれないか?」