クールな次期社長の甘い密約
とうとう言ってしまった。これで、私と専務は終わりだ……
楽しかった日々が走馬灯の様に頭の中を駆け巡り、倉田さんの顔が涙で滲んでいく。堪らずドアに手を伸ばすと倉田さんの気の抜けた声が聞こえてきた。
「そんな事、言われなくても承知してますよ」
「へっ? 今、なんて言いました?」
「ですから、大沢さんが宮川先生の姪ではないという事は知っていると言ったんです」
「ええ~っ! 知ってたんですかぁー?」
「何かと思えば、そんなバカバカしい事でしたか」
バカバカしいって……私は大真面目だったのに……
今まで悩みに悩み、心を痛めていたのはなんだったんだろうって愕然としていたら、倉田さんが「なるほど、そういう事でしたか……」と失笑する。
「大沢さんは、私達がアナタの事を宮川先生の姪だと勘違いしている。そう思ったのですね。そして、宮川先生の姪だから専務が大沢さんを好きになったんじゃないかと疑った」
「はあ……」
「ブッ! アハハハ……」
えっ? うそ……鉄仮面の倉田さんが大爆笑してる。ある意味、そっちの方が宮川先生の件より衝撃的だった。
「こんな事言ったら失礼ですが、実に稚拙で浅はかな考えです」
「ぐっ……」
「専務が自分の利益の為にアナタを利用しようとしていたなんて、そんな疑いを掛けられていたと知ったらショックを受けるでしょうね」
倉田さんは怪しい笑みを浮かべ、片方の口角を上げる。